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【判断の要旨】
労働者に対して懲戒処分(譴責処分、諭旨解雇及び懲戒解雇)を行い、譴責処分及び諭旨解雇したことを会社が社内に公示したことについて、
会社が労働者に対して行った譴責処分は有効であるため名誉棄損に該当しないが、諭旨解雇は無効であり、無効な諭旨解雇処分を社内に公示したことは名誉毀損に該当すると判断した。
【事案の概要】
1 労働者Xは、平成19年10月23日、会社Yとの間で、労働契約を締結し(以下「本件労働契約」という。)、営業所で営業担当として勤務していた。
2 会社Yの労働者Xに対する譴責処分
ア 会社Yは、令和2年12月15日、労働者Xに就業規則の懲戒 事由に該当する非違行為があるとして、譴責処分(本件譴責処分)を行った。
非違行為は、労働者Xが毎日の営業活動について営業日報(以下「日報」という。)をB所長に提出する義務を負っていたが、同年7月2日から提出せず、会社Yが何度も日報の提出を命ずる業務命令を発令したにもかかわらず、同年11月16日まで日報をB所長に提出することを怠った、という内容であった。
イ 会社Yは、令和2年12月15日頃から4日間、労働者Xに譴責処分をしたことを会社Yの社内に公示した。
3 会社Yの労働者Xに対する諭旨解雇処分
ア 会社Yは、内容証明郵便により、労働者Xに対し、懲戒処分を準備していることを通知し、弁明書の提出を催告した。
イ 会社Yは、令和3年5月18日、労働者Xに辞令書(以下「本件辞令書」という。)を交付し、労働者Xを本件諭旨解雇に処した。本件諭旨解雇は、同月末日までに自主退職に応じないときは、同年6月1日付けで懲戒解雇処分に処するとの内容を含むものであり、本件辞令書には、懲戒事由として、会社Yが労働者Xを本件諭旨解雇とした理由とする非違行為が次の16個(なお、16個のうち3個を懲戒事由とすることを撤回した。)列挙されていた。
会社Yが主張する懲戒事由の大要は、次のとおり。
①合計2年間以上日報を提出せず、上長からの提出命令にも従わなかったこと
②労働者Xの担当会社を変更する旨の業務命令に従わなかったこと
③業務引継ぎのために取引先への訪問を命じたが拒否したこと
④会社Yの与信管理規程に基づく信用調査を行わずに新規取引開始申請を行ったこと
⑤会社Yの販売管理規程に基づく上長の事前承諾を得ずに製品を販売したこと
⑥取引先に販売した製品を社内の倉庫に保管する際に締結する保管契約を締結せずに保管したこと
⑦労働者Xの担当会社が多数の精神クレーム情報を発信していたが、対応せずに放置したこと
⑧労働者Xが冷媒の破壊処理業務の担当者であったにもかかわらず、破壊処理業務の注文書の発注を怠り放置したこと
⑨労働者Xが製品の販売価格を仕入価格より下回る価格で12回にわたり取引先に販売したこと
⑩粗利13%を確保するように命じられたにもかかわらず、上長に無断で売価を下げ、粗利13%が確保されていない虚偽の見積書を作成し、製品を販売したこと
⑪上長を介さず、直接社長に対し業務上の相談や要求に関する電子メールを複数送信したこと
⑫社長が労働者Xの求めた事項の調査結果を説明した際に、説明内容が気に入らずにテーブルを激しく叩き、社長に罵声を浴びせたこと
⑬B所長との残業代等、日報の提出及び担当変更の各業務命令に関する話合いにおいて、B所長に対して馬頭や激しい暴力的な口調で難詰したこと
【裁判所の判断】
(1) B所長は、平成31年4月1日、労働者Xに対し、電子メールで、営業活動などを記載した日報について、今後、自身を含む複数の者に送信することを徹底するように指示した。
しかし、労働者Xは、令和2年7月2日以降、何らの説明もなく、日報を提出しなくなり、その後に複数回にわたりB所長から日報を提出するように命じられたにもかかわらず、同年11月16日まで日報を提出しなかったことが認められる。
これらの事実によれば、労働者Xは、会社Yの営業を担当する社員の業務の一つとして、日報をB所長に提出しなければならないことを認識していたにもかかわらず、令和2年7月2日以降、日報の提出をしなくなり、B所長からの複数回の命令にも応じないまま、同年11月16日まで日報を提出しなかった任務懈怠が認められるのであるから、労働者Xの上記行為は、就業規則に該当するものといえる。
(2)そして、労働者Xの営業活動を管理する地位にあるB所長にとって、日報がその営業活動の管理に当たり重要な資料となることは労働者Xも会社Yの営業を担当する社員として当然に認識してしかるべきものであり、労働者XがB所長への日報の提出を怠ることになると、B所長は、会社Yの営業所における労働者Xの営業活動の管理及び営業所の営業活動の掌握に困難をきたすことになる。
このような日報の提出の重要性に加え、労働者XがB所長からの複数回の命令にも応じないまま4か月以上も提出を怠り続けたことなどからすると、譴責処分は、客観的合理的な理由があり、社会通念上も相当であるといえ、有効である。
譴責処分は有効であり、会社Yが労働者Xを本件譴責処分に処した旨を社内に公示したことは、就業規則に基づく措置であり、公示期間も4日間程度であった。
ここから、公示行為は、就業規則に基づく正当な行為であり、かつ、会社Yが公表した事実は、譴責処分が有効であることから全て真実である。
したがって、たとえ労働者Xの氏名が掲載されていても、譴責処分の公示行為につき会社Yが不法行為責任を負うことはない。
(1)会社Yが諭旨解雇の懲戒事由と主張する諭旨解雇を基礎づける懲戒事由該当性について、次のとおり判断した。(要約)
・該当する:①、⑩
・一部該当する:②
・該当しない:③、④、⑤(譴責処分の懲戒事由にとどまる)、⑥、⑦、⑧(譴責処分の懲戒事由にとどまる)、⑨、⑪、⑫、⑬
(2)懲戒事由①については日報の重要性や不提出の期間などに鑑みると会社Yの企業秩序に与えた影響は小さいものとまではいえないものの、その余の労働者Xの非違行為については、いずれも会社Yの企業秩序に重大な影響を与えたとまでは認められず、それぞれ譴責処分を相当とする程度の比較的軽微な非違行為にとどまるものであるといえ、直ちに諭旨解雇に処することを正当化し得るほどの重大性はない。
また、会社Yが、労働者Xに対し、労働者Xの非違行為について十分な注意、指導を行っていたものとも認められない。
そして、会社Yは、労働者Xを譴責処分に処したわずか半年足らずの間に、減給や出勤停止といった他の軽い懲戒処分を講ずるなどしてその勤務態度の改善を図ることもなかった。
会社Yが諭旨解雇処分に至ったことは、会社Yの懲戒権の行使として拙速であった。
以上によれば、諭旨解雇処分は、客観的に合理的な理由があるとはいえず、社会通念上相当であるともいえず無効である。
会社Yは、労働者Xを諭旨解雇に処した令和3年5月18日から4日間程度、会社Yが労働者Xを諭旨解雇に処したことについて、被懲戒者名、懲戒処分対象行為の項目、懲戒処分の種類、懲戒処分の本件就業規則上の根拠条項を、会社Yのデスクネッツ(会社Y社内のイントラネット)のインフォメーション欄に登載する方法で、公示した。
そして、諭旨解雇が無効であることからすると、会社Yによる公示行為は、たとえ就業規則に基づき行われたものであるとしても、労働者Xが諭旨解雇に処せられるべき非違行為を行った者であるとの真実に反する事実が会社Yの社内に公表され、労働者Xの社会的評価を低下させたものといえるから、労働者Xの名誉を毀損したものとして不法行為を構成する。
当該不法行為により生じた労働者Xの精神的苦痛を慰藉するための慰謝料としては、公示方法が社内のみであり短期間の公示であったことなどの事情を考慮すれば、10万円をもって相当と認める。
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